8月の養蜂家の仕事

スズメバチは、どんな目的で養蜂場へ飛来してくるの??

花がほとんど咲かない8月。花が咲かないことに加えて、養蜂をするにあたってもう一つの難所が訪れます。それは、スズメバチ類の襲来です。

「襲来なんて言い方は、大袈裟なのでは??」

と思われるかもしれません。しかし養蜂場には毎年何百匹ものスズメバチが訪れ、なにも対策を施さなければ、蜜蜂のコロニーはあっという間に全滅してしまいます。

まさに「襲来」です。

写真1 捕らえたオオスズメバチの女王

養蜂場へ飛来してくるスズメバチ類は、キイロスズメバチ、コダカスズメバチ、オオスズメバチと様々ですが、飛来してくる目的は同じです。

これら肉食昆虫であるスズメバチ類にとって、巣箱内に貯蔵されたミツバチが目的ではありません。ミツバチそのものが彼らの餌であり、ミツバチを襲い自分の巣へ持ち帰り、たんぱく源とする目的のために飛来します。

飛来するスズメバチの種類によっても、ミツバチの襲い方は違ってきます。

キイロスズメバチやコダカスズメバチは、ミツバチをコロニーの巣門の前で待ち構え、巣を出入りするミツバチを一匹ずつさらっていきます。

これはこれで「被害」と言えますが、巣箱内のコロニーには何万匹ものミツバチが暮らしています。襲われるミツバチの数は多くて数百匹程度を間引かれる程度なので、ミツバチのコロニー維持・存続にはそれほど大きな影響はありません。

問題は、日本最強の昆虫とも呼ばれる、オオスズメバチの襲来です。

写真2 お腹部分の黄色と黒の部分がぼんやりしているコダカスズメバチ性格は比較的温厚なタイプです。

オオスズメバチの被害

日本最強昆虫のオオスズメバチの被害。それはキイロスズメバチやコダカスズメバチのように、巣門を出入りするミツバチを少し間引かれる程度ではすみません。

オオスズメバチはミツバチのコロニーが生息する巣箱内に侵入し、片っ端からミツバチを殺戮してゆきます。

たった一匹のオオスズメバチがミツバチの巣箱内に侵入したとしても、10分も経たないうちにミツバチは全滅します。

しかもオオスズメバチは基本的に複数の個体で飛来してることが多いので、集団で巣箱内に入られてしまったら、ものの数分でミツバチのコロニーは全滅します。

写真3 巣門の前に設置した捕殺器の前に集団で群がるオオスズメバチ

ミツバチは、襲来したスズメバチに反撃はしないの??

このように甚大な被害を及ぼすオオスズメバチの襲来。個体の大きさとしては、とうぜんオオスズメバチより小さいミツバチたちですが、数の上で優位に立ってます。そんなミツバチたちは、襲来したオオスズメバチに反撃しないのでしょうか?

多くのネット情報や養蜂の書籍には、

「日本在来種である二ホンミツバチは、襲来したオオスズメバチを集団で団子になるように取り囲み、団子状になることで発生する熱でオオスズメバチを蒸し殺し反撃できます。

しかし、オオスズメバチがいない地域で生まれた種であるセイヨウミツバチは、オオスズメバチに反撃する本能を宿してなく、反撃することはできません。」

と記されていることが多くありますが、実際、私がセイヨウミツバチの養蜂場を運営し見てきた限りでは、セイヨウミツバチでもオオスズメバチを蒸殺することもあります。

しかしそれは1匹、多くても2匹程度のオオスズメバチが襲来してきたとき。加えてコロニーが大きくミツバチの数が多いときに限ったときのことで、集団のオオスズメバチに襲われたらひとたまりもありません。

写真4 セイヨウミツバチ専門の当養蜂園で、オオカスズメバチを退治するミツバチ。

 

養蜂家はスズメバチ対策になにをしたらいいの??

このように、放っておけばオオスズメバチに全滅させられてしまうセイヨウミツバチのコロニー。養蜂家が行うその対策にはいくつかありますが、そのなかの一般的な手段として、

・網で捕殺。

・巣門に捕殺器の設置。

・粘着テープを巣箱の上に置く。

・入ったら出れない構造のペットボトルにぶどうジュースを入れを置いておき、おびき寄せ
て水没させる。

などのいくつかの種類があります。しかしオオスズメバチに巣の中に侵入されてしまったら即アウトなので、オオスズメバチが巣門をくぐれなくするように作られた捕殺器の設置は必須です。

写真5 お盆を迎える季節になると各巣箱には、ミツバチは通過できるがスズメバチは通過できない大きさの入口を持つ捕殺器を巣門に設置します。

写真6 巣門の前に設置した捕殺器に捕らえられ出れなくなったコダカスズメバチ。

写真7 巣門の前に設置した捕殺器に捕らえられ出れなくなったコダカスズメバチ。

捕殺器を設置する以外でオススメな方法は??

捕殺器を設置する以外でオススメな方法は、一般的ではありませんが「ハエたたきで撃ち落とす」方法です。

網で捕まえて捕殺しようとしても、捕まえたと思ってもその網から飛んで逃げてしまうことも多く、運がわるければ反撃を受けてしまうこともあります。

しかしハエたたきで撃ち落とせば一撃で決着をつけられます。

「オオスズメバチと戦うなんて、危険じゃないの??」

と思われるかもしれませんが、オオスズメバチは彼らの餌であるミツバチ達に夢中であり、巣門の前にたかっています。

巣門に群がるオオスズバチの後ろから一気に撃ち落とせば決着がつきます。たとえその一打が失敗したとしても、ハエたたきの場合、追撃の一打が網で行うより容易です。

一見、危険度が高そうな方法ではありますが、10年以上、捕殺器と合わせてこの方法でオオスズメバチに対応していますが、まだ刺されたことや、ヒヤリとするようなことは起こっていません。

写真8 慣れてくるとスズメバチの飛来の導線が読めるようになり、素手での捕殺もできるようになりますが、万一の事態もあるのでお勧めはしません

まとめ

ミツバチの巣箱に侵入されてしまったら一発アウトなオオスズメバチ対策。

その作業になれないと怖さを感じてしまうことは仕方がありませんが、いちど経験してしまえば特別なものでもなく、「この季節の定例的な作業」になります。

スズメバチ類の対策は、餌を蓄えるオオスズメバチ類の越冬の準備が終わる、概ね10月末まで続きます。

少し怖いかもしれませんが養蜂業の継続のためにも、少しだけ勇気を出して取り組んでみましょう。

養蜂家 西山リョウ
埼玉県で「一雨養蜂園」を経営して10年。

https://www.instagram.com/hitoame_youhouen/

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