春の養蜂家の仕事

梅の花が終わり菜の花や桜が咲き、いよいよアカシアも咲き始める百花繚乱の春。養蜂家の一番忙しい季節であり、養蜂家としての一年の総決算が訪れます。

そんな繁忙期である春に、養蜂家はどのように動き回っているのでしょう。もしかしたら、「蜜を絞っているだけじゃない??」と思われるかもしれません。

しかし春の繁忙期には他にもやらなければならないことがあります。今回は繁忙期の春に、蜜を搾る以外に養蜂家は何をしているのかを解説いたします。

春の段階では結果はあまり気を配っていません

春は一年もの間ミツバチのお世話をし、その総決算として蜜を絞る季節です。

そうなってくると、一番気を配っている作業は「採蜜」ではないかと思ってしまいます。

しかし養蜂家はその年の蜜がたくさん採れるかどうかなど、本番の春には気をもんだりはしていません。正確に言うと、「もう今さらやれることは少ないので諦めている」という方が近いかもしれません。

なぜなら2月から3月初めくらいには、その年のだいたいの予想はついてしまっているからです。

というのも越冬に成功した群があったとして、その群が蜂の数を増やしてくる2月や3月の勢いや様子で、その年の春の結果がなんとなく分かってしまうからです。

「で、そもそも調子ってなに??」となりますが、それは単純に群のミツバチの数です。

巣箱の中にたくさんのミツバチがいれば「調子が良い」、少なければ「調子が悪い」となります。

そしてミツバチの調子が春にイマイチであったとしても、その時に対応しても遅いのです。生き物相手の仕事なので、

「問題があったときになにかをしたから、たちどころに良くなった」、ということはありません。

というのも養蜂の作業の結果は、半年後にでるものだからです。今調子が悪いということは、半年前の作業が雑であったか、間違っていたからです。

なので「蜜をたくさん採れるような強群にする」というのは、春の段階ではもう手遅れです。

そういった事情から、養蜂家はたくさんの蜜を採りたいと切に願いつつも、春本番にはそこまで気を配っていないことが多いのです。なんとなく結果は分っているからです。

群の調子が急激に良くなることはないことは分かりました。では、調子が悪い群は採蜜を諦めるしかないのでしょうか??

伝家の宝刀 合同技術

春に調子の悪い群を大きくする方法として、一つだけ残された手段があります。

それは「合同(ごうどう)」という技術です。

その技術は読んで字のごとく、二つや三つの群を一つに合同することで働きバチの数を増やし、一つの強群に仕立て上げることです。

え?でも一つの強群にしたとしても、結局2つや3つの群が合わさっただけで、養蜂場内の働きバチの総数は変わってないのでは??

と思ってしまいます。

しかし不思議なことに、1つの強群が集める蜜の量は、弱群が集める蜜の量の何倍、ときには何十倍にもなります。

私の経験上、「1個の強群」は「10個の弱群」の合計より蜜を集めてきます。

ということは弱群を合同させて強群に仕立て上げれば、それなりの量の蜜を集められるということになります。

しかしそんな方法があるにせよ、弱群と弱群を掛け合わせても強群になることは100%というわけではありません。

養蜂場全体としての結果を挽回するのはそうそう簡単ではないのが現実です。

養蜂家がこの時期に一番注力しているのは、分蜂の防止作業

では、そんな春に養蜂家が本当に力を入れて行わなければならない作業はなにかというと、「分蜂防止の作業」です。

4月、5月の春真っ盛りの頃、ちょっと隙を見せるとミツバチたちはどんどん分蜂してしまいます。

分蜂とは簡単にいうと巣別れで、新しい女王が生まれると旧女王は働きバチの半分を連れて出て行ってしまいます。つまり、強群があっという間に弱群になってしまいます。

しかも新たな旅のために働きバチたちはお腹いっぱいのハチミツを食べて旅立つので、せっかく溜まっていたハチミツもなくなってしまいます。

これはなかなか強烈なダメージで、せっかく一年お世話をしても、たった1回の分蜂で全てダメになってしまいます。

養蜂家はそんな分蜂をなんとしても防止するために、新女王の蛹(さなぎ)が育てられている「王台」というものを取り除いています。

そうすることで新女王は誕生せず、分蜂が起こらなくなります。

しかし巣箱内に何千、何万匹もミツバチがいるなかで全ての王台を見逃さずに除去するのは、なかなか手間で大変な作業です。

しかしこの作業なくして、「業」としての養蜂はありえません。

分蜂群を大切に

春になると、街にミツバチの群れが現れたというニュースが流れていることがあります。

そして悲しいことに、消防機関や警察、業者などにより駆除されてしまうこともあります。

分蜂群は自分たちの新たな新天地を探すことに必死で、「誰かを刺す」余裕はありません。

そもそもミツバチは巣を襲ってくる外敵に対して刺すのであって、分蜂群は巣がない状態なので刺す気がおこりません。

どこかで分蜂群をみかけたら、数時間や数日でいなくなるのでそっとしておいてあげるか、養蜂家に連絡していただけると嬉しいです。

西山リョウ

埼玉県東松山市にでて一雨養蜂園を経営

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