日本にあるセイヨウミツバチの楽園

近年、セイヨウミツバチのメッカとして養蜂の種蜂や花粉交配用のミツバチを全国に供給している場所があります。それは養蜂の飼育戸数が日本一である自然豊かな長野県でしょうか?それとも大手の養蜂関連企業がある岡山県でしょうか??

いえ、違います。それは日本最南端の県、沖縄県です。

常夏でエメラルドグリーンの海を誇る島がセイヨウミツバチの楽園??

なんだか少し意外であり、違和感のようなものすら感じてしまうかもしれません。

今回は沖縄県がセイヨウイツバチにとって楽園となった理由をお話しいたします。

目次

そもそもセイヨウミツバチは日本で野生化できるの??

ダニ問題は大丈夫なの??

沖縄県でヘギイタダニ問題が大きくならない理由

実際の試験結果

まとめ

そもそもセイヨウミツバチは日本で野生化できるの??

日本に生息するミツバチには、ニホンミツバチとセイヨウミツバチという2種類のミツバチがいます。

ニホンミツバチはその名のとおり、日本列島に古来より生息するミツバチのことであり、セイヨウミツバチは商業的な利用のために日本に受け入れられたミツバチです。

採蜜量の多さや、巣箱に入居したらその後逃避することのない性質から、一般的に趣味以外の養蜂で飼育されているミツバチのほとんどはセイヨウミツバチです。

そんな2種類のミツバチですが、ニホンミツバチは古来より日本で遺伝子を繋いできただけあり、日本の気候風土に適用し野生化しているのは言うまでもありません。そもそももとから日本の野生の昆虫です。

では、セイヨウミツバチについてはどうでしょう。春の分蜂などで巣箱から飛び出し、人の管理下から離れたセイヨウミツバチのコロニーは野生化し、種を繋ぎ日本で生息し続けることはできるのでしょうか??

残念ながらできません。

なぜなら日本には獰猛な肉食昆虫、オオスズメバチが生息しているからです。

オオスズメバチはお盆から晩秋にかけて、ミツバチのコロニーを群で襲撃します。その襲来は、狙いを定めたミツバチのコロニーが全滅するまで執拗に続きます。

ニホンミツバチは襲撃を受けたときには、オオスズメバチを集団で団子状に取り囲みその内部に熱を発生させて蒸し殺す「蜂球」という戦法でオオスズメバチに対抗します。

しかしオオスズメバチが生息しない場所からやってきたセイヨウミツバチは、対抗する手段を遺伝的に宿していません。

このような理由から、セイヨウイツバチのコロニーはオオスズメバチに滅ぼされてしまうのです。

しかしセイヨウイツバチが安全に暮らせる例外的な場所があります。

それが沖縄県です。

なぜならトカラ列島以南にはオオスズメバチは生息していないからです。

天敵のいない沖縄県では、野生化したセイヨウミツバチが代を重ねて存続できているのです。

ダニ問題は大丈夫なの??

では、セイヨウイツバチに寄生しコロニーを全滅に追いやるヘギイタダニに対しては大丈夫なのでしょうか??

ヘギイタダニの被害は世界中に広がり、日々養蜂家を悩ませ、ヘギイタダニが問題で廃業する養蜂場も後を後を絶ちません。

ニホンミツバチはグルーミングでお互いの体に付着したヘギイタダニを除去する習性を持つのに対して、セイヨウミツバチは対応手段を有していません。

ということは、セイヨウミツバチのヘギイタダニ問題は沖縄県でも同じなのでは??

しかし沖縄県ではヘギイタダニ問題の課題感はそれほど大きなものではないのです。

それはなぜでしょう??

沖縄県でヘギイタダニ問題が大きくならない理由

沖縄県では日本の他の地域よりヘギイタダニの課題感が大きくならない理由として、気候的な理由があります。

ヘギイタダニの生態において、その耐暑性は36.5度を超えるとほとんど産卵しなくなり、38度を超えると死に始めます。

その一方で、セイヨウミツバチの上限致死温度は50度程度であることから、暑さに対してヘギイタダニより強いという特性をもっています。

この耐暑性温度の差分が、セイヨウミツバチに優位に働くのです。

そうはいっても熱帯気候の沖縄県といえど、もちろん毎日ヘギイタダニが死滅する38度を超えるわけではありません。

しかしヘギイタダニの致死温度に至らなかったとしても、その高温がヘギイタダニの活性を奪い弱毒化させます。

つまり熱ストレスにより、ダニの繁殖が抑えられている可能性があるのです。

実際の試験結果

私が埼玉県中央部で営む養蜂場でも、暑さがダニ問題に優位に働くという結果が得られています。

直射日光があたる場所に巣箱を置いたコロニーと、涼しい森に置いた巣箱のコロニーの生存率を4年間にわたり調べました。

その結果、全ての年で直射日光があたり夏の気温上昇の影響を受けるコロニーの生存率が圧倒的に高いという結果がでています。

養蜂業界では一般的に直射日光が当るとよくないと言われており、夏には巣箱の上にコモや藁などを置いたり、もしくは巣箱を日影の場所に移したりすることが多いものなのですが、そういった慣例に反して非常に興味深い結果となりました。

まとめ

養蜂というと大自然が傍にある長野県や山梨県、または北海道などをイメージしてしまいやすいところです。しかしセイヨウミツバチの2大災厄ともいえるオオスズメバチやヘギイタダニの観点から見て、今養蜂で注目すべきは沖縄県といえるかもしれませんね。

これからも注目していきたいところです。

西山リョウ

埼玉県東松山市で一雨養蜂園を経営

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