「毎日の健康のために」と手に取る蜂蜜。自然の甘味とされ、健康志向の高い人々に人気の食材ですが、実は“本物の蜂蜜”は意外と少ないかもしれません。
近年、世界各国で蜂蜜の偽装問題が深刻化しており、「見た目は蜂蜜、中身はほとんど糖液」という製品が市場に出回っています。あなたが食べている蜂蜜は、本当に“ミツバチの恵み”と言えるものでしょうか?
国際調査が暴いた「偽りの甘さ」
EU(欧州連合)の研究機関JRCが2021〜2022年に行った「From the Hives」プロジェクトでは、加盟国に輸入された蜂蜜320サンプルを分析。その結果、なんと**46%が「純粋な蜂蜜ではない」**とされました。
不正の内容は、米や甜菜(ビート)、小麦などから作られた糖液が混入されていたケースが中心で、見た目や味だけでは見抜けません。これらはコストが安く、風味も蜂蜜に似せて加工されているため、市場では“本物”として売られてしまうのです。
さらに、花粉を高精度フィルターで除去する「超濾過」という手法も問題視されています。これにより、蜂蜜がどの地域や植物から採取されたのか特定できなくなり、原産地を隠蔽する手口に使われています。
偽装蜂蜜に関する主な調査結果
以下は、各国・機関による調査の概要です。
調査機関・国 | 対象期間・対象品数 | 不適合率 | 主な偽装内容 |
---|---|---|---|
EU(JRC) | 2021–2022年/輸入320バッチ | 約46% | 米・甜菜糖シロップ加糖、超濾過 |
米国FDA | 2021–2023年/約250サンプル | 約3〜10% | 高果糖シロップ混入、給餌偽装 |
英国独自調査(2024) | 小売30品(スーパー・直送含む) | 約80%(小売品) | DNAプロファイルが蜂蜜と一致せず |
特に英国での調査では、スーパーで販売されている蜂蜜の24品中23品がDNA的に「本物ではない」可能性があると判定され、地元の小規模養蜂家から直接販売された製品だけが100%純粋と認定されました【The Guardian】。
どのように“偽装”するのか?
偽装蜂蜜の手法は年々巧妙化しています。主な手口には以下のようなものがあります。
- 加糖(シロップ混入)
→ 米やコーン、甜菜から作ったシロップを混ぜて、水増しします。 - 酵素処理・加熱加工
→ 粘度や風味を蜂蜜に似せて再現します。 - 超濾過(超微細フィルタリング)
→ 花粉などの「自然由来の痕跡」を除去し、産地の追跡を困難にします。 - 給餌偽装
→ 蜜源植物の花ではなく、砂糖水をミツバチに与えて作られた“蜂蜜”を天然品と称します。
偽装が多いとされる地域は?
特に以下の国々では、偽装蜂蜜の問題が多く報告されています。
- 中国:世界最大の蜂蜜輸出国。混合・加工蜂蜜がEUや米国から警戒されています。
- インド:米由来の糖液を混ぜた蜂蜜が欧州で違反例として複数報告。
- トルコ/東欧諸国:産地偽装や輸出時のラベル改ざんの疑いが持たれた例も。
消費者ができる“選ぶ力”
このような現状のなかで、私たち消費者ができることもあります。
- 極端に安い蜂蜜には注意
- 「純粋」「非加熱」「非加糖」などの表示を確認
- 原産地・製造者の明示があるものを選ぶ
- 地元の養蜂家や信頼あるブランドの商品を購入する
ミツバチが自然の中で一生懸命集めた“本物の蜂蜜”を守るには、私たちの選択がカギとなります。
国際的な対策の広がり
国際機関でもこの問題は重く受け止められています。
- **Apimondia(世界養蜂家連盟)**は2024年、偽装が横行しているとして「蜂蜜部門の国際表彰を一時中止」しました【The Guardian】。
- EUは2024年、はちみつ表示に関する指令を改正し、2026年から混合蜂蜜に対する原産国名・混合比率の表示を義務化します【European Commission】。
今後はさらに検査技術(NMR、同位体測定など)も精緻化され、違反の摘発が進むと期待されています。
まとめ:自然の恵みを守るために
蜂蜜は、1匹のミツバチが生涯で集める量がスプーン1杯ほどとも言われる、貴重な自然食品です。その価値を守るためには、消費者である私たちが正しい知識を持ち、選ぶ力を持つことが必要不可欠です。
“甘いからこそ、偽りに注意”。本物の蜂蜜を、正しく見極めましょう。
📚 参考リンク
- EU From the Hives 調査報告
👉 European Commission – Honey Fraud 2021–2022 - 英国蜂蜜調査報道
👉 The Guardian – UK Honey Authenticity - Apimondia 表彰中止に関する報道
👉 The Guardian – Beekeepers Halt Awards
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