10月までは夏の残滓があり、涼しい日もあれば汗をかいてしまうほどに暑い日もあり、三寒四温といった趣です。
しかし暦が11月に入ると、季節は急に冬へと傾き始めます。
このように季節が急に冬へと大きく回転する時期に養蜂家が行わなければならない作業は、「越冬の準備」です。
越冬とは?ミツバチの冬の暮らし
ミツバチたちは花の咲くことのない冬の間はどのように過ごしているのかというと、巣箱に籠り、ただただ春の訪れを待ちます。
面白いことに外気温が8℃を下回ると巣箱から出て活動することはなくなり、巣箱の中で球状にかたまり、暖をとります。このようにみつばちが球状にかたまった状態を「蜂球」といい、その球の内側の蜂と外側の蜂は順番に入れ替わり、皆が平等にその温かさを享受できるように工夫しています。
そしてさらに季節が進み寒さが厳しくなってくると、女王蜂は産卵を停止し、残った大人のミツバチだけで越冬を試みます。
そのような過ごし方をしながら越冬を試みる時期に、ミツバチたちの問題となってくることが3点あります。
それは、「食料」「寒さ」「コロニーの蜂の数」です。
冬の食料問題
まず食糧問題ですが、花の咲かない冬のエネルギー源は巣箱に備蓄されたハチミツのみであり、冬の間に消費され少なくなってきてしまっても、外に花が咲いていないため補充することはできません。貯蔵されている全てのはちみつがなくなってしまったら、ミツバチたちは餓死してしまい、コロニーは全滅してしまいます。
そのため養蜂家は、そのコロニーが越冬するのに十分なハチミツが巣箱内に貯蔵されているかチェックし、もし足りていなければ他のコロニーの余剰なハチミツを移すという作業が必要になります。
寒さ対策
寒さ対策については、巣箱を布で覆ったり、合成樹脂製の板で巣箱をすっぽりとかぶせる等の色々な手を講じる養蜂家も多くいます。しかし私の経験上、関東地方から南の地域であれば、特別な対策を講じなくても越冬は可能です。せいぜい、巣門を紙や布、板などを置いて通常時より狭くするくらいでしょうか。
私が関東地方で運営している養蜂場もここ10年以上、ほとんど防寒対策を施したことはありません。
蜂の数問題
さらに季節が進み寒さがきびしくなってくると、女王バチは産卵を停止します。新たに産まれてくる蜂はいなくなります。そして当然、寿命を迎えた成虫、大人のミツバチたちは死んでゆきます。つまり、コロニーのミツバチの数は急激に少なくなってゆきます。
巣箱内のミツバチの数が減ってくると、蜂球をつくり暖をとることができなくなり、凍死し全滅するリスクが高まります。
では、無事に越冬することができる蜂の数はどれくらい必要でしょう??
それは11月初旬のタイミングで、巣枠4枚から5枚に充満している蜂の数が必要だと言われています。個人的な経験では3枚の数でも越冬できましたが、なんとか春を迎えてもはちみつを採取するほどにはコロニーは成長しなかったため、やはり冬の始まりには4枚から5枚の充満数は必要といえるでしょう。
みつばちの数が少ないコロニーは、越冬を諦める??
コロニーの最盛期である5月の春頃には、巣箱内のみつばちの数は数万匹にも膨れ上がります。しかしその後の夏の酷暑、ヘギイタダニの寄生の時期、オオスズメバチの襲来の季節を乗り越えてきたミツバチのコロニーは、その数を大きく減らします。
そうなってくると、越冬に十分ミツバチの数といわれる充群4枚から5枚の数に至らないコロニーがでてくるのも致し方ありません。
では、ミツバチの数が少ないコロニーは越冬を諦めて全滅する運命を受け入れなければならないのでしょうか??
いえ。一つだけ手段があります。
それは「合同(ごうどう)」といわれる技術です。
合同とは??
合同とは、越冬できそうもないミツバチのコロニーを、他のミツバチのコロニーに強制的に同居させ、一つのコロニーとして群を形成する作業です。
つまり、ミツバチの数が少なくなってしまったコロニーを、他のコロニーに引っ越しさせてしまうことです。
ただ、ミツバチたちはそのコロニーの臭いで、「仲間」「敵」を判別しているので、違う臭いのするみつばちと共生させようとしても、戦ってしまいます。
そのため、ハッカ油の強烈な香りや燻煙器で起こした煙を大量に吹きいれることで嗅覚をマヒさせ、敵と見方を判別できなくさせて共生させます。
この合同という技術は、ミツバチの嗅覚をマヒさせる以外にもさまざまな方法があり、細かく記述すると本が1冊書けてしまうのではないかという程になってしまいますので、それは次の機会に譲ろうかと思います。
西山リョウ
埼玉県東松山市で「一雨養蜂園」を経営。
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