健康や美容に良いとされるハチミツ。 その甘い香りや、花々を巡るみつばちの姿を見て心和み、思わず自然の恵みに感謝したくなる気持ちになります。
そんなハチミツが、なにからどのようにできているかしっかり理解している人は、もしかしたらそう多くはないのかもしれません。
養蜂業を生業にしている私が、マルシェなどでお客さまとハチミツについておしゃべりしていると、そう感じることがときおりあります。
あらためて今回は、ハチミツがどのように作られるのか、その過程を紐解いてみたいと思い
ます。
目次
ハチミツは、花々が出す花蜜だけからできていない
花蜜だけでははちみつにならないものなの?
花蜜が砂糖水と変わらないのであれば、砂糖水からハチミツはできるものなの??
まとめ
ハチミツは、花々が出す花蜜だけからできていない
春になり暖かくなると、みつばちたちは一日 に約2,000回から5,000回もの花々を訪れ、花粉と花蜜を集めます。
花粉は生まれたばかりの幼虫たちのタンパク源として、そして花蜜をハチミツの原料として利用します。
花粉は両足に花粉団子としてくっつけて、花蜜はいったん胃の中へ貯蔵し巣箱へ戻ります。
そして花蜜は外勤で花蜜を採って巣箱に戻ってきたみつばちから、巣箱内で仕事をする貯蔵係のみつばちに口移しで渡されます。その貯蔵係のミツバチはハニカム構造の巣房に貯蔵します。
「ほら、やっぱりハチミツは、花々の花蜜からできているものでしょ??」
と思われるかもしれませんが、ここの過程で2つの成分が加えられています。
インベルターゼとグルコースオキシダーゼという酵素が、外勤で花蜜を集めているミツバチの消化器と、口移しで花蜜を受け取った内勤の貯蔵係の消化器を通過する過程で加えられているのです。
花蜜だけでははちみつにならないものなの?
外勤のみつばちたちが集めてくる花蜜。それは言ってしまえばいわば砂糖水とそう変わりはありません。花蜜をいくら凝縮しても、ハチミツにはなりません。
つり花蜜が外勤蜂と貯蔵係の蜂の胃袋を2回通過することで、胃から分泌されるインベルターゼとグルコースオキシダーゼという酵素が加わることではじめて、花蜜はブドウ糖と果糖に分解され、ハチミツとなります。
そしてブドウ糖や果糖などこうした単糖類は、もうこれ以上消化する必要はなく、摂取すれば直ちに吸収されて、20分後に血液に移行できます。
こうして消化の負担なく血糖値の上昇を伴わずに栄養摂取できる、優良食品であるはちみつの完成です。
花蜜が砂糖水と変わらないのであれば、砂糖水からハチミツはできるものなの??
砂糖水をみつばちに摂取させれば、たしかにハチミツに似たようなものはできます。
見た目や性状がハチミツに似たものを作らせることは可能ですが、それは「本物のハチミツ」ではありません。
本物のハチミツは、ミツバチが花の蜜を集め、酵素を加えて、巣の中で熟成させることで作られます。この過程で、花ごとの香りや栄養素、ビタミン、ミネラルなどの微量成分が含まれた独自の風味と品質が生まれるのです。
一方、みつばちが砂糖水を与えられてそれを原料とし得られるものは、砂糖水にインベルターゼとグルコースオキシダーゼという酵素を加えてを加工しただけのもので、花の蜜由来の成分や風味は含まれていません。品質的にも「ハチミツ」とは呼べません。
まとめ
今回は、ハチミツが作られる過程で必ず加えられなければならないインベルターゼとグルコースオキシダーゼという酵素をとおして、はちみつの生成過程について紐解きました。
ただ、この酵素だけではなく、花の種類に含まれる違った微量成分により、品質の高いハチミツができることも知っておきたいところです。
みつばちたちの胃から分泌される酵素の力と、その蜜が採れた花の個性を楽しみつつ、自分の好みの蜂蜜を探すのも面白いですね。
西山リョウ
埼玉県東松山市で一雨養蜂園を経営
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