みつばちが迎えているかつてない危機

「みつばち」という言葉のイメージはなんだか牧歌的で、彩り豊かな自然の中で生命の息吹を感じさせるものがあります。

しかしそんなみつばちたちに、かつてない危機が訪れています。

ヨーロッパやアメリカでは野生のミツバチの大半が消滅し、日本でも管理しているミツバチのコロニーの8〜9割が滅んでしまうことも珍しくなくなりました。

そんな危機を救うために、世界中の養蜂家や研究者が解決策を試行錯誤で探していますが、なかなか決定的な解決方法を見つけられないままでいます。

今回は、そんな「みつばちの危機」についてご案内します。

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目次

・ヘギイタダニとその影響

・ヘギイタダニの拡散とその原因

・現行の対策と管理戦略

・持続可能な養蜂のために

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<ヘギイタダニとその影響>

ヘギイタダニの生物的特徴

みつばちを危機に陥れているのは、ヘギイタダニといわれる長さ1.2㎜、厚さ1.7㎜の楕円形をしたダニです。みつばちの大きさが13㎜なので、その約1/8の大きさということになります。

みつばちへの影響

そんなダニが、みつばちにどのような影響を与えるのでしょう?

ヘギイタダニに寄生されたみつばちは、2つの被害を受けてしまいます。

それはダニに寄生されたみつばちが、脂肪体を吸われて弱ってしまうという「個体的な問題」と、コロニー全体に各種ウィルスを媒介するという「全体的な問題」です。

これだけ蜂数が充実したコロニーでも、ウィルスが蔓延するとほんの数カ月で崩壊

<ヘギイタダニの拡散とその原因>

世界的な拡散の歴史

ヘギイタダニは、東アジアや東南アジアのみちばちに寄生する局地的なダニでしたが、1900年以降から日本とロシアの二つのルートを経由して、世界的に広がりました。

そして、みちばちの出入りの管理が厳格であったオーストラリアがヘギイタダニが感染していない唯一の地域でしたが、ついに2022年に感染が確認されてしまいました。

なおヘギイタダニの感染力は強力であり、オーストラリア政府は根絶に向けて奔走しましたが、決定的な成果があがらず根絶を断念する考えを明らかにしました。今後は、寄生の拡大速度を遅らせ、影響を限定的にする方針に舵を切りました。

<現行の対策と管理戦略>

では、そんな脅威のダニ問題に対して、現在取れる方法を3つ確認していきましょう。

化学的防除法

現行でもっとも一般的なダニ防除法は、殺ダニ剤の農薬を使用する方法です。

養蜂家でこれらダニ剤を全く使用することなくみつばち管理をしている人は、ほとんどいないかと思われます。

ただ、この方法だと適正に薬を管理、処方しないとはちみつに農薬が残留してしまうリスクがあること。そしてダニが薬に対して耐性を有してくるため、徐々に効果がなくなってくるというデメリットもあります。

生物学的管理法

これはみつばちとダニの耐熱温度の違いで駆除する方法です。

ヘギイタダニは38℃を超えると死に始め、43℃になると完全に死滅します。

一方でみつばちの致死温度は50℃であることから、巣箱内を43℃以上50℃以下の温度で管理すれば、ダニのみを死滅させ駆除することができます。

具体的には巣箱をビニールシートで囲い、巣箱内を43℃以上50℃以下に保つ方法ですが、

ビニールの設置の手間と温度管理の難しさを考えると、なかなか難しい方法ではあります。

ただ私の養蜂場では、真夏に直射日光に触接あたる場所に設置したコロニーの生存率は、日影や森の中など、みつばちにとって快適な環境に設置したコロニーより生存率は数倍高いのという結果がでているので、そのような楽な手段で温度管理するのも方法かもしれません。

遺伝的方法

これは、ダニに強い遺伝的形質のある種を残すという方法です。私もダニ剤を極端に減らし、もとから耐ダニ性のあるコロニーのみが残るように取り組んでいますが、10個の個コロニー中で2個のコロニーが残れば大成功といった割合なので、経済性を考えるとなかなかオススメできる方法ではないかもしれません。

<持続可能な養蜂のために>

まとめとなりますが、養蜂業に関わる色々な国の色々な人がダニ問題に対して様々な取り組みをし、トライ&エラーを繰り返しています。

ただ、「決定版」といえるような解決方法は見つかっておらず、色々な方法を組み合わせながらだましだまし養蜂に取り組んでいる、というのが現実です。

なにも対策を講じないと2〜3年もすれば確実にみつばちのコロニーを崩壊へと向かわせるヘギイタダニ問題。

持続可能な養蜂のためにも、確実な手法や手段の発見が渇望されています。

★この記事のライター

埼玉県東松山市で一雨養蜂園を営む

西山リョウ

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