巣箱の中で何千、何万もの仲間と共生するみつばち。みつばちは蟻と同じように社会性昆虫と呼ばれ、1匹の女王蜂のもとにコロニーを形成し集団で生活します。
このように巨大なコロニーを築き、それぞれに役割分担をして生活しいるだけあり、みつばちは非常に合理的な昆虫です。無駄なことは一切しません。
たとえば食料となる花蜜や花粉を求めて訪花する際には、やみくもに巣箱から飛び立つことはありません。どこに多くの花が咲いていて、どの方角に飛来してゆけば最短距離なのか巣箱内で仲間と情報を共有してから飛び立ちます。
さらに言えば、自分たちのコロニーの巣を脅かされたりしないのであれば、「刺す」という行為もそうそうしません。
私は仕事で日々養蜂場を歩き回っていますが、巣箱内を点検するために上蓋を開けたりなどしないかぎり、そうそう刺されることはありません。
みつばちは「刺す」という無駄なカロリーは、実はそんなに使わないのです。
そんな無駄を嫌うみつばちたちです。巣が六角形であることにも、合理的な理由があるはずです。
今回は、ミツバチの巣が六角形である理由を明らかにしてみましょう。
目次
ハニカム構造の巣
空間の有効活用
強度を保つ最高形態は六角形
経済的な六角形
まとめ
ハニカム構造の巣
まず、みつばちの巣を各部屋ごとに改めて観察してみましょう。蜂蜜や花粉を貯めたり、幼虫を育児するみつばちの巣の各空間は、写真のとおり正六角形です。
呼び方の話なのですが、六角形のことをヘキサゴンといい、このように正六角形が隙間なく敷き詰められた構造をハニカム構造といいます。
空間の有効活用
しかし丸型や正三角形や正方形のほうが作りやすそうな感じもしますが、なぜあえて正六角形なのでしょう??
一つの理由は、空間の有効利用です。
仮に丸形で各部屋を作ると、どうしても使用しない無駄な空間ができてしまいます。
強度を保つ最高形態は六角形
そして強度の問題。たとえばある一方向からの外力がかかった場合、正方形の場合はパタンと潰れて折り畳まってしまいます。しかし正六角形は、5角つの辺、つまり外力がかかった方向を除いて5つの壁があるため、受けた外力や衝撃を5つの方向に分散することができます。
尚、原子レベルの話でも、グラファイト(黒鉛)やカーボンナノチューブなどのように炭素が正六角形に結合したものが最も強度が高い結合であることが知られています。
経済的な六角形
そしてもう一つの大きな理由として、建材の有効活用。つまり、巣の建築材料であるミツロウが一番少なく製作できる点です。
たとえばある地点に蜂がいるとして、その中心から部屋を作る場合、それぞれの部屋を三角形で作ると壁は6枚も必要になり、正方形で作ると壁は4枚必要になります。そこで六角形で作れば、壁は3枚で済むことになります。
また、三角形、正方形、六角形の辺の長さを比べると、意外なことに六角形が一番短くなります。つまり、作らなくてはならない各部屋の外壁も、六角形が一番少なく済むということになります。
巣の建材となるミツロウ。そのミツロウ1gを生産するのには、10gのハチミツが必要といわれています。
そんな高価な建材です。なるべく少ない量のミツロウで巣の建築を済ませるためにも、構造を六角形にするというのは非常に合理的な選択です。
このような強度・経済性の両面で有用な六角形。みつばちは複眼も六角形の形状を採用しています。
また、みつばち以外にも活用している昆虫は多く、アリの巣の構造にも見られます。アリは地下に複雑な巣を作りますが、その一部には六角形の構造が見られることがあります。これは、空間を最大限に活用し、巣の構造を強化するためです。
また一部のカタツムリの殻は、その表面パターンに六角形の形状を含んでいます。これは、殻の強度を高め、同時に重量を最小限に抑えるための進化です。
そして一部のクモの巣の中心構造にも六角形が見られます。つまり中心部分を六角形に近い形で構築します。これは、巣の全体的な強度を高め、効率的な捕食を支援するためです。
まとめ
このように自然界において、極めて合理的で、生存の可能性を高める意味において非常に魅力的な形である六角形。
無駄を嫌い、コロニーを形成しシステマチックに動くみつばちたち。そんなみつばちが、「巣」と「視覚」という生存のために重要な箇所に六角形を採用するのもうなずけます。
●ライター
西山 リョウ
埼玉県東松山市で一雨養蜂園を運営
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