何万、ときには何十万という規模にまで膨れ上がるミツバチのコロニー。
そこまでたくさんの個体で共に生きていると、昆虫といえどいろいろな問題もおきてきます。
数を維持するために十分な餌の確保や、巣箱の内部空間の広さやその温度や湿度などの快適性などなど。
そんななか、集団で暮らすなかでの一番の問題は「病気の蔓延」ではないでしょうか。
人間社会でのコロナ禍でもあったように、社会性を伴い生活している生物はウィルスなどの病原体がその社会に落とされると、一気に蔓延しそのコロニー全体を弱体化させます。
今回は、このようにミツバチのコロニーの存続にとって脅威である病原菌に対しての救世主ミツバチ、VSH蜂について取り上げたいと思います。
目次
昆虫であるミツバチにも、ウィルスや病原菌って蔓延するものなの??
ミツバチに病気はどうやって蔓延するの?
救世主VSH蜂
VSH蜂がいれば、ダニ問題も解決??
まとめ
昆虫であるミツバチにも、ウィルスや病原菌って蔓延するものなの??
そもそも「病気」といわれるとそれは人間や動物が罹患するものであって、1年以内に死んでしまう種類がほとんどである昆虫においてそんなものがあるのか疑問に思ってしまいます。
しかし今回はミツバチだけを取り上げてますが、バロア病、ノマゼ病、ヨーロッパ腐蛆病
、アメリカ腐蛆病、サックブルード病、小型ハチノスシダレダニ症、ウイングレス症候群などなど、無数の病気が存在します。
ミツバチに病気はどうやって蔓延するの?
病原体は至る所に存在し浮遊していますが、それに罹患し発症するかは免疫力の問題です。これは人間と同じですね。
では、どうして罹患してしまうのか。それはやはりここでも「ヘギイタダニ問題」がでてきてしまいます。
世界中の養蜂家を悩ませ、養蜂場の持続可能性やひいてはミツバチの存続すらも危うくさせているヘギイタダニです。このダニがミツバチに寄生することにより、蜜蜂を弱らせます。
そして免疫の弱くなったコロニーが、いろいろな病気にさらされてしまいます。
つまり、
「ヘギイタダニが、病原菌やウィルスがミツバチのコロニー内で蔓延するための道筋をつけてしまうという」
ということです。
救世主VSH蜂
そこで救世主になってくれるのは、VSH蜂といわれるミツバチです。
姿形はおなじミツバチです。ほかの個体と同じ女王から生まれています。
ただ、ひとつだけ他にはない特性、才能をもった蜂です。
それは、フェロモンに対する感受性がほかの個体より強いことです。
たとえば発育途中でヘギイタダニに寄生された蜂児は発達が遅れ機能不全に陥ります。
そのような異常を、ミツバチたちはフェロモンを手がかりにして検知します。
そのなかでもとりわけ検知能力が高い個体を、VSH蜂といいます。
VSH蜂は、発育途中で蓋がされ見えないうえフェロモンが感じにくい巣房内の異常も検知し、その個体がダニに寄生されていたら蓋を破り引きずり出しダニの繁殖を防ぎます。
つまり、コロニー内の衛生蜂です。
VSH蜂がいれば、ダニ問題も解決??
この特異な能力をもったVSH蜂がいれば、現在世界中に蔓延しているダニ問題も解決しているのでは??と思ってしまいます。
しかしこのVSH蜂は、どのコロニーにもいるわけではありません。
そしてその能力は、経験や加齢で得られるものではなく、主に遺伝に左右されるものです。
つまり単なる才能です。
世界各地の研究者が、この特、血統、遺伝的形質を持ったミツバチを増やそうと研究していますが、その血統はなかなか浸透するには至っていないのが実情のようです。
まとめ
養蜂業を営んでいると、養蜂協会から講習や勉強会のお知らせがたびたびきます。
そしてその講習内容は、「養蜂業における衛生管理」であることが多いです。
つまり、ミツバチ管理の衛生面での講習です。
養蜂にもいろいろな技術はありますが、なにはともかく「衛生」が最重要な項目なのかもしれません。
そんな重要な巣箱内の衛生を守ってくれるVSH蜂。その遺伝的形質が広がってくれることを、養蜂家として切に願います。
※VSH(Varroa-Sensitive-Hygiene-Behavior)
バロア感受性行動
バロア=ミツバチに寄生するダニのことを、バロアとも呼ぶ
西山リョウ
埼玉県東松山市で一雨養蜂園を経営
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