皆さま、こんにちは。
はちみつ大学のぶんぶん編集長です。
以前もシンガポールでインタビューをさせて頂き、多くの反響があったアレクサンダー陽子さんが新刊書「[入門]世界一やさしい はちみつの教科書」を上梓されます。
今までに2冊はちみつに関わる本を出されているのですが、今回の本の意図やコロナ禍の影響など、お話を伺ってまいりました。
ぜひご覧くださいね。
★コロナ禍で、はちみつの世界はどう変わったのでしょうか?
コロナ禍で、大きなマーケットでは売れなくなりましたね。
蜂蜜は、世界的にはどちらかというと昔からお土産で買われていることが多かったので、コロナによって観光が途絶えてしまい、観光で取り扱っていたグループの養蜂に影響が出ました。
ヨーロッパ、アラブ諸国や東南アジアの空港、お土産屋さんなど、観光目的の国ではちみつを販売している業者をいくつか知っていますが、一時期流通が全て止まってしまったようです。
はちみつを採蜜している場所は限られているので、それらの国内においても、養蜂をして、そこで瓶詰めをして販売しているところは売れなくなり、人の出入りがなくなってしまいました。
そのため、はちみつはここ2、3年、余っていましたね。中には、結構大変な業者もいて、破産に追い込まれているところもありました。
私が仲良くしている養蜂家さんは、食用の養蜂をやめて、農業のための受粉用の養蜂に変えました。受粉用のはちみつは、自然農法のものでない限りどうしても農薬まみれになってしまいます。特に、果物によっては農薬を使わないと育てられないといったものもあり、巣箱も農薬まみれになり、結果的にはちみつも農薬に汚染されてしまいます。
私が一番好きだったはちみつを販売していた業者は、コロナになってすぐに「生活のため、しばらくは食用として渡せるクオリティのはちみつは出せない」という連絡がきて諦めていましたが、先日再び連絡があり、「また、食用のはちみつを再開したので、来年から提供できる」とのことでした。
やっと、徐々に戻ってきているという感じです。最近では観光用のはちみつの余剰したものをを買い取ったりということもしています。
★コロナの影響により、医療グレードのはちみつの確保は難しくなりましたか。
あまり変わらないですね。実は、最近カナダ大使館から連絡がありました。
過去に、私が一度契約を取りやめた会社があったのですが、次世代に経営がバトンタッチされてクオリティが落ちてしまったことが原因です。
日本にはポジティブリスト制度があり、食品に使用して良い物質のリストが提示されているのですが、その会社は、経営者交代があった途端に、その基準に合わせれば良いという考えで出荷するようになったのです。
私の視点では、ポジィティブリストの基準は恐ろしくゆるいので、そのような基準のものは疾患に悩む人には使いたくないのですが、そのカナダの会社にすれば、ポジティブリストのレベルで日本の需要には十分見合っていると考えたようです。
私は、はちみつをバッチごとに検査に出しています。その検査で引っかかったので問いただしたところ、「日本の輸入基準に見合っているから大丈夫」という返答だったのです。そうなると、元々の契約の話と違いますので、契約を取りやめざるを得なかったのです。
そういった理由でその後は営業にも対応していなかったところ、先日、大使館経由で連絡がきたのです。弊社とどうしても関係をやり直したいという手紙が届いたので、「クリーンなはちみつの確保は大変なことはわかっています。御社のはちみつは本当に美味しいので、クリーンであればいつでも取引を再開したい」という旨をお伝えしました。
その会社のはちみつの中で私が取り扱っているものは、深い森の中で農業がほぼ周囲にないエリアのものなのですが、普段、彼らが巣箱を置いている場所からさらに山の奥深く5時間以上車で登らないと採れません。しかも、その環境には多くの巣箱を置けませんから、採蜜の量も多くありません。きっと彼らはもっと多く販売したかったから他のはちみつを混ぜてカサ増ししたのだろうと思います。
当然のことながら、麓のはちみつを少しでも混ぜてしまうと、混ざって欲しくないもので汚染されてしまいます。実際そういったはちみつは普通に地元のマーケットにも売られています。輸出するときには、各国の毒性基準に見合うようにシロップなどでもカサ増しして毒性を薄めて販売するようなことが普通に行われています。
環境毒によって蜂の生態系も弱体化していることが大いに問題になっている今、やはり、はちみつのクリーン度を気にすることは、結果蜂たちの健康度にもつながると信じています。
★現在は、どのような国と取引しているのでしょうか。
私自身だけの話ですと、一番、取引が大きいのは、オーストラリアとマレーシア、フィリピンの一部ですね。あとは、スコットランドやニュージーランド、リトアニア、ラトビアなどです。ウズベキスタンのはちみつは、今、検査に出しているところですね。
ロシアの取引先のはちみつはとても良かったのですが、彼らには本当に人道的にひどいことをされて大きな損失を出しました。色々と国民性なども絡んでくるので勉強になります。
良い悪いではないと思いますが、どんな環境にいるのかと言うのは人も蜂も生き残るためのスキルや知恵が発達するものなのでしょう。
マレーシアのように常夏でいつでも花が咲いている場所の蜂は非常に穏やかで、マスクなどせずとも刺されることもありません。
ロシアやカザフスタンでは、巣箱に寄っただけで実は数カ所刺されたことがあります。攻撃的な性質は蜜を取られまいとする本能的なものですよね。非常に興味深いです。
先ほどお伝えした取引先の国ですが、これも もちろん国の国民性が影響はしてきますが、最終的には「誰と」なのかなと思っています。
どんな国の人であっても、人間的に同じような信念を持ち、信頼が築けていく相手ととの取引になりますよね。やはり、どんなに良い蜂蜜だとしても、人間として自分と価値観が違えば、取引はしたくありません。きっとどこかで衝突するでしょうからね。
ちなみに、世界的に非常にたくさんのはちみつを輸出しているのは中国、ニュージーランド、アルゼンチン、ドイツ、ウクライナなど有名ですが、安心なはちみつが入手できるか?というと、残念ながら手放しで頷けないのが現状です。
それでも、きちんと現地で探して信頼を築ける養蜂のグループと出会えれば、どこの国にも取引したいはちみつは存在すると信じています。それは日本国内でも同じです。
★前回伺った時よりも、取引している国が増えていますね
どこの国にも、蜂に愛を持ってはちみつに情熱を注いでいる人がいるのです。ただ、それを見つけるのが大変ですね。
こういう仕事を続けていると、年間、何百本もはちみつをもらいます。しかし、蓋を開けた瞬間、8割くらいはアウトですね。開けた瞬間にシロップの匂いがするのです。中には、口の中に入れた瞬間に吐き出したいはちみつもたくさんあります。まだ、偽物と言いますか混ぜ物を取り扱っているところは非常に多いですね。
★本を出版されるなど、はちみつについて伝えていらっしゃいますが、認知が上がってきたと実感することはありますか。
残念ながら全くないです。
シロップが入っていることを、殆どの人は匂いと舌だけではわかりません。私の講義を受講して、はちみつの輸入を始めてもシロップ入りを取り扱っている人がほとんどのようで、それは非常に残念です。検査に出すには結構な費用もかかりますし頭の痛い問題ですよね。どうしたら国内のはちみつも安全なものにしていけるのか、課題だと感じておりまして取り組みを始めています。
★今回、本を出版された目的を教えてください。
以前、私が出した教科書は、講義でやっていたことをまとめた本でした。エネルギーや波動のことも全て混ぜ込んで書いたので、ページを開けるとはちみつらしからぬ内容が載っていますし、どうやら難しすぎて一般の人には理解できない部分がありました。
今回は、一般の人が簡単にはちみつを理解できるようにページ組みからやり直して書き直したものになります。編集も教科書的に項目別に仕分けしました。
代謝や栄養素である糖、脂質など基本的なことを中心に、エネルギーを作るってどういうことなのか、みんなの生命体は生きていくためにどうやって維持されているのかなどが書かれています。
はちみつの本なのですが、健康の指南書のような内容に仕上がっています。正しい体の捉え方についても触れていて、糖尿病の病態の人が糖を怖がっているけど、糖尿病ってそもそもなんだろうっというメカニズムのことまで書いてあります。
化学式が一緒で同じ糖であっても、自然のものと合成のものでは代謝は違います。シロップが入っているだけで体に良い影響がないことは最新の論文でも明らかになりました。
また薬剤や農薬にまみれているような糖と、汚染のないクリーンな環境でとれるナチュラルなはちみつでは、体に入ると別物として働きます。糖という表現をもって一緒かのようにとらえられがちですが、同じではないということにも触れています。
メソポタミア文明など、古来からはちみつが使われていたことはわかっています。中世の記述でも、はちみつが色々な症状に効いたなど書かれていますが、それは、はちみつの抗菌作用のせいではありません。
その時代、抗菌作用で効果がある病態に使われるばかりではなかったですからね。美容や糖尿病など「菌」の悪さとは関係がありません。では、抗菌作用ではないはちみつの効果は何なのかということを解いています。なぜ、昔からはちみつがさまざまな病気・疾患・美容にと重宝されてきたのか、何にでも効く万能の薬と言われた理由も書いています。
確かに、はちみつは貴重で値が張りますが、その値段の基準が抗菌の度合いである必要はなく、大切なのは安全でクリーンであるかどうかだと思っています。
★まとめ
陽子さんと話していると我々が捉えているはちみつの世界と全く違う景色が見えています。そして、真剣に健康に役立つものを探して、その養蜂家を応援し、必要な方に届ける努力をされています。
世の中には現代医療で解決できないカラダの不調があります。日々のカラダのケアや不調を改善するためにはちみつも有効な手段になりますが、そのはちみつにも質や選び方がちゃんとあるんだよというのは、一般の人からすると目からウロコの情報だと思いました。
今回の本ははちみつに興味がなくても、健康への新しい発想に触れる分かりやすく読める本だとのことです。興味の湧いた方はぜひ手に取ってくださいね。
また、なんと2月にトーク&サイン会(全国ツアー)も実施されるようです。リアルな陽子さんに会いたい方はぜひチェックしておいてくださいね。
アレクサンダー陽子さん前回記事はこちら
<関連サイト>
【イベント】[入門]世界一やさしい はちみつの教科書 新刊発売 有馬ようこトーク&サイン会
●2月23日 木(祝) 14:00~16:00 福岡 六本松蔦屋書店 https://store.tsite.jp/ropponmatsu/event/business/31331-1652220121.html
●2月24日 金 19:30~21:00 東京 ジュンク堂書店池袋本店
●2月25日 土 15:30~17:30 東京 ふれあい貸し会議室新宿No20 -新宿オーク ※サイン会のみ https://hl-book.co.jp/news/event/introduction-to-honey-e-s/
●2月26日 日 (1部)12:00~14:00 (2部)18:00~20:00 名古屋 星野書店近鉄パッセ店https://hoshinoshoten.jp/event/arimayoukoevent/
●2月28日 火 18:00~20:00 大阪 梅田蔦屋書店
https://store.tsite.jp/umeda/event/beauty-health/31178-1351480115.html
●インスタグラム情報
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