10月はミツバチに給餌の必要もなく、春のようにたくさんはちみつが採れる時期でもないため、「のんびり過ごせるのかな」と思いきや、意外にも忙しい時期です。
今回ははちみつの「販売」についてお話いたします。
オオスズメバチの飛来が続く
例年8月のお盆ころに始まるオオスズメバチの襲来ですが、10月に入ってもとまりません。その年の気候にもよりますが、11月中旬くらいまで続きます。
捕らえたオオスズメバチをはちみつ漬けにして販売するのが、最近の国内の養蜂家のトレンドです。滋養強壮に良いとされています。
急がないといけない時期
このように、オオスズメバチのはちみつ漬けの加工をするかどうかは別として、ミツバチを守るために9月と同じようにオオスズメバチ対策をしなければなりません。そしてもう一つ、なるべく急いでとりかかったほうが良いことがあります。
それは、在庫のハチミツ販売の工夫です。
なぜ急がないといけないの?
秋が深まり気温が下がってくると、はちみつは「結晶化」し始めます。
結晶とは低温によりはちみつ内のブドウ糖が固まることで、白くシャリシャリの半固形状になることです。決して傷んだり、カビが生えたり、腐食したということではありません。
ただ、結晶化すると見た目や液状のときと比べた際の使いにくさにより、「手に取って貰いにくくなる」のは事実です。なかにははちみつの結晶化を、はちみつが痛んでしまってることと混同されているお客様もいらっしゃいます。
じゃあどう売る?
結晶化してしまった場合、二つの選択肢があります。
一つ目は、湯煎してあたため結晶化した蜜を液状の状態に戻す。
二つ目は、結晶化を「良いもの」として逆手にとって販売する。
1つ目の方法ですが、湯煎するので当然はちみつは加熱されているわけです。
加熱されるとはちみつに何が起こるのでしょう?
それは、加熱の温度が60℃を超えると栄養成分やミネラルの死滅が起こります。
つまり乱暴な言い方をすると、はちみつが「ただの甘い液体」になってしまいます。
ということは、結晶化した蜜は非加熱の生はちみつであるという証拠にもなるので、
そのことをアピールして販売することができます。
このように結晶化を逆手にとって販売することができます。
蕎麦の蜜をどう売る??
そして10月から11月にかけては、採蜜の最後のタイミングとなります。そしてその最後の蜜は、「蕎麦の花」の蜜になることがほとんどではないでしょうか。
この蕎麦の蜜。花は白く小さく可憐な様子ですが、その蜜は墨のように黒く、そして独特の「臭い」がします。わかりやすく言うと、多くの人にとって「美味しくはない」です。
ただ、この蕎麦の花のハチミツですが、その蜜に含まれる抗酸化のミネラルは他の蜜に比べて圧倒的に多く含有されています。
その「良薬は口に苦し」なところをアピールしないと売りにくい、もしくは説明なく販売してしまうと、「この養蜂園の蜜の味ってこんな感じなんだ…」と誤解されてしまい、今後の販売に支障をきたします。
はちみつはよく売れます
筆者は養蜂業の前には果樹農家をしており、また友人にも農家の方が多くいます。
その経験から感じていることは、あらゆる農産物のなかでハチミツは本当に良く売れます。
毎年売り切れてしまうものなので、賞味期限が長い産物でありながら在庫を抱えることはあまりありません。
ただ、結晶化の際にさきほどのようなひと工夫をしないと、翌年まで在庫を抱えてしまったり、ときにはお客様の誤解をまねいてしまうことがあります。
はちみつ販売にもうひとつの注意点
はちみつは1歳未満の赤ちゃんが食べると乳児ボツリヌス症にかかることがあります。
ボツリヌス菌は熱に強いので、加熱したとしても死滅することはありません。
「1歳未満の乳児にはあたえないでください。」という表記も忘れずにラベルに記載しましょう。
結晶化とボツリヌスというリスクはあるものの、自分で採ったはちみつがよく売れる、喜んでいただける喜びは非常に大きなものがあります。養蜂を始めて採蜜できるようになったら、先ほどの2点に注意してぜひ販売に挑戦してみましょう。
西山リョウ
埼玉県東松山市で「一雨養蜂園」を経営。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。