9月の養蜂家のお仕事

9月はスズメバチ対策、ヘギイタダニ対策、養蜂場に沢山巣を貼るクモ対策など処理しなければならないことは沢山あります。

スズメバチ捕殺器に囚われたオオスズメバチ

来襲したオオスズメバチを返り討ちにするミツバチ

やることが多すぎて忘れがちになってしまうことは、「抜き蜜」という作業です。
これはミツバチのコロニーが無事に冬を越すために、非常に大切な作業です。

「抜き蜜」ってなにをすることなの??

抜き蜜とは、やることは採蜜、つまり春の蜜搾りと全く同じものです。
ただ、その作業を行う目的・ゴールが異なるので、言葉も違ってきます。

秋口の蜜搾りを「抜き蜜」とは言うものの、「蜜を搾りその蜜を販売」わけなので行うことは全く同じですが、この抜き蜜にはそれに加えてもう一つ目的があります。
それは、「女王が産卵するスペースを空けてあげること」です。

びっしり蜜が貯められていると、産卵するスペースがなくなります

巣箱内の巣板に敷き詰められる要に並んだハニカム構造の各部屋。

ここに蜜が貯まってしまいスペースを占有してしまうと、とうぜん女王蜂はそこに卵を産卵することができません。

卵を産卵できないとなると、当然成虫の蜂の数も徐々に減少してゆき、コロニーの勢いが弱まってきます。

春の最盛期のミツバチのコロニー たくさんのミツバチで溢れています。

秋にスカスカになってしまったミツバチのコロニー

コロニーの蜂の数が少なくなると起こる問題

コロニーに勢いがなくなってくると起こる問題としては

1 コロニー全体の耐病性が弱くなり病気にかかりやすくなる
2 他のコロニーの蜂の侵入を許し、巣箱内の蜜を奪われてしまう
3 巣箱内の温度調整ができなくなり、育児が難しくなる

などのさまざまな問題が起こってきます。

そして一番大きな問題は、

「冬を越せなくなること」です。

冬の季節に外気が8度を下回るとミツバチは活動をやめ、巣箱から飛び立たなくなります。
冬には花も咲きませんので、外へ飛び立つ必要もありません。
では、巣箱のなかでみつばちたちは何をしているかというと、凍死しないように固まることで熱を発し暖をとり、春を待ちます。

越冬のため、10月末までに5枚充群の蜂数をキープしたいところ

この蜂の塊を蜂球「ほうきゅう」といいます。

蜂の数が少なく、この蜂球が小さくなるときちんと暖をとれず凍死してしまいます。そして
真冬は女王の産卵は停止しているので、冬の間は減った蜂が新たに補填されることはありません。

つまり冬を迎えた蜂たちは、なにがなんでも1匹でも多く春を迎え女王が産卵を再開するまで生き延びないと、そのコロニーは崩壊します。

そしてこの働き蜂たちの寿命は30日〜60日です。
ということは、冬を越す蜂たちは秋に産まれるミツバチたちです。
つまりこの秋に産まれる蜂が少ないと、冬を越せなくなるということです。
そのために、秋にたくさん卵を産めるように、スペースを開けてあげることを抜き蜜といいます。

春の蜜と秋の蜜の違い

このような目的の抜蜜作業ですが、その目的は若干違えど、やっていることは春の採蜜と同じなので非常に楽しいものです。
当然、採取したはちみつも販売します。

そしてその面白さのひとつは、
「春の蜜と色や香り、味が全く異なること」
です。

養蜂を行う地方や地域によりその程度は若干ことなるものの、関東地方だと7月後半から8月を境に、蜜の色が黒く変色します。

春の巣枠に貯められた蜜

秋の巣枠に貯められた蜜。明らかに春と比べ黒ずんでいます。

これは蜜が劣化したわけではなく、採れる花が違うための変色です。
夏に咲く栗に花、ヒマワリ、夏野菜の花などなど。

その味については、その甘さに「重み」がでてきます。
春はサラっとした甘さですが、ズシっとした甘さです。

そしてミネラルなどの含有量については、その含有量は春より多く、特に秋に咲く蕎麦の花から採れた蜜などはルチン、鉄分などのミネラルの含有量が春の蜜と比べてはるかに多く、販売されるときには「スーパーフード」とされて一部で非常に人気があります。

採蜜して比較した春の蜜と秋の蜜

スズメバチのはちみつ漬けが高価で売買されており、この時期に捕まえたオオスズ メバチも活用できます。

蜜を搾るのは一年のうちで最後の季節となりますが、ミツバチやハチミツの不思議を感じながら作業できたらいいですね。

ライター
西山リョウ
埼玉県で「一雨養蜂園」を経営して10年

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