よく知られていることかもしれませんが、日本の養蜂で飼育されるミツバチには西洋ミツバチと日本ミツバチという2種類のミツバチがいます。
そして西洋ミツバチと日本ミツバチは同じミツバチではあるものの、その性格や特性は大きく異なります。それは犬種間の違いや、猫の品種の違いと同じようにその特性は異なります。
非常に稀でほとんどいませんが、そんな二種類のミツバチを同じ巣箱内で混合飼育する養蜂家もいます。
しかしそんなことは可能なのでしょうか??
たとえば魚の養殖でも、真鯛と黒鯛を同じ養殖網内で養殖するなど聞いたことはありませんし、養鶏で鶏とウズラを混合で飼育するなども聞いたことはありません。
今回は、そんな西洋ミツバチと日本ミツバチの混合飼育についてご案内いたします。
目次
西洋ミツバチと日本ミツバチの違い
混合飼育するメリットは
混合飼育の方法
まとめ
西洋ミツバチと日本ミツバチの違い
西洋ミツバチと日本ミツバチの混合で飼育といわれても、そもそもミツバチは昆虫です。犬や猫などの動物ならいざしらず、昆虫を品種の違いを介さずに合同して飼育することなど可能なのでしょうか。しかもミツバチは大きなコロニーを築き、協力し合いながら生きる社会性昆虫です。
そこでまず、西洋ミツバチと日本ミツバチの違いについて簡単にまとめてみたいと思います。
西洋ミツバチ | 日本ミツバチ | |
大きさ | 13~14㎜ | 12~13㎜ |
デザイン | 腹部の黄色と黒の縞がグラデーション | 全体が黒っぽい。腹部の縞ははっきり |
スズメバチ | 応戦不能 | 応戦可能 |
ダニ問題 | 対応不能 | グルーミングで対処 |
採取量 | 日本ミツバチの3倍程度 | 西洋ミツバチの3分の1程度 |
性格 | 攻撃的になることもある | おだやか |
疫病 | 疫病に弱い | 疫病に強い |
西洋ミツバチは日本ミツバチと比べ若干大きく、腹部のしましまの黒と黄色の境目はぼんやりグラデーションを帯びています。
その一方、日本ミツバチの腹部のデザインは白と黄色の境目がはっきりしています。
簡単にいうと、黄色っぽくて大きめなのが西洋ミツバチで、黒っぽくて小さめなミツバチが日本ミツバチです。
西洋ミツバチ
日本ミツバチ
そして日本ミツバチは夏から秋にかけてオオスズメバチが襲来する季節。集団で覆いかぶさり熱を発生させて退治するという、「集団蒸し殺し戦法」で対応する日本ミツバチ。その一方でオスズメバチが存在しない場所がルーツである西洋ミツバチは、襲われれば応戦はするものの、有効な攻撃手段を持ちえないため倒される一方です。
そしてコロニーを絶滅させてしまうヘギイタダニに対しては、日本ミツバチはお互いグルーミングすることにより体についたダニを落としますが、西洋ミツバチは対応手段をもっていません。
これはヘギイタダニのルーツが東アジアで、ヘギイタダニがいる環境で暮らし種をつないできた日本ミツバチと、ヘギイタダニが存在しない環境で生活してきた西洋ミツバチとの違いがあるかもしれません。
そして採蜜量についてですが、西洋ミツバチは日本ミツバチの3倍程度の採蜜量があり、商業として営まれる養蜂には西洋ミツバチが使われることが一般的です。
またその性格は西洋ミツバチは季節や環境、受けた刺激等により攻撃的になることがありますが、日本ミツバチは西洋ミツバチに比べて温和だといわれています。
ミツバチの巣箱に襲来するオオスズメバチ
混合飼育するメリットは
ではこのように違いのある二種類のミツバチを、あえて混合で飼育するメリットは何があるのでしょう??
それは、西洋ミツバチの特性であるダニや疫病に弱いけれど採蜜量が多いという長所と、そして日本ミツバチの特性である採蜜量は少ないけれどダニや疫病に強いという長所。それぞれの短所を混合飼育することにより補完しつつ、長所だけは残しハイブリッドにできる、ということです。
混合飼育の方法
では、どのように混合飼育を始めればよいのでしょうか??
それはいたってシンプルです。日本ミツバチ卵や成虫の入った枠を、西洋ミツバチの巣箱に移し入れることです。
日本ミツバチは攻撃性はないものの環境に対しては神経質なため、日本ミツバチの巣箱に西洋ミツバチの卵や幼虫を入れてもうまくいかないようです。
茶色い蓋をされた中に、ミツバチの蛹が格納されています。
ただ、このとき日本ミツバチの巣枠に薄めたハッカ油やハーブ水などの臭いのする液体を吹きかけ、西洋ミツバチの巣箱内にも同じくハッカ油やハーブ水などを吹きかけることです。
なぜならミツバチは臭いで敵と見方を判別しているため、このように同じ臭いを吹きかけることで品種の違うミツバチを見方と識別させる方法です。
とうぜん混合したコロニーの女王は西洋ミツバチであるため、新たにうまれてくる卵は西洋ミツバチのものであるため、日本ミツバチが少なくなってくたらその都度日本ミツバチの卵や幼虫の枠を加える必要があります。
蛹の枠を入れる
まとめ
なかなか考えつきもしない日本ミツバチと西洋ミツバチの混合飼育。
新たな取り組みを確立し、その技術をマスターするのはなかなか手間なことではありますが、この方法を成功させれば、
「たくさん蜜を集められて、病気やダニ、スズメバチにも強いコロニー」の完成です。
私はまだ試してみたことはありませんが、なかなかすごいことを考える養蜂家もいるのですね。
西山リョウ
埼玉県東松山市で一雨養蜂園を経営
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