真冬になり気温が下がると巣箱のなかでかたまることで暖を取り、春の訪れをじっと待つミツバチたち。
女王蜂も産卵をほぼ停止し、ミツバチのコロニーは活動を完全に休止します。
そんな状況になってくると養蜂家もやることがなさそうに思えますが、実は一つだけ、極めて重要な作業が残っています。
今回は真冬に行う養蜂家の仕事についてお話いたします。
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目次
じつは養蜂家の仕事で重要な作業はひとつだけ
シュウ酸がおわったら砂糖水を給餌
まとめ 光明が差してきた養蜂の持続可能性
じつは養蜂家の仕事で重要な作業はひとつだけ
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ミツバチたちの巣を作ってもらう巣素を入れる作業や、新しい女王が誕生すると巣別れしてしまうのでそれを阻止する王台潰しなどなど。養蜂にはその季節ごとにやることはいろいろあるものの、セイヨウミツバチの養蜂の仕事で決定的に重要な作業は実は一つだけです。
極端な言い方をすればこの作業さえうまく処理することができれば、初心者で養蜂一年目であっても、ベテラン養蜂家でさえ難しいといわれる「越冬問題」をクリアできます。
そして採取する蜜の種類として、おそらく最も難しいであろう「桜の花の蜜」も採取可能です。
では、じっとしていて活動しないこの真冬のミツバチのコロニーに対して、養蜂家は何をするというのでしょう??
それは「ヘギイタダニの駆除」です。
養蜂業の持続可能性を奪う唯一とも言えるヘギイタダニ問題。
ヘギイタダニはミツバチの体に寄生しコロニーの弱体化を招き、ひいてはコロニーを全滅させます。
そんなヘギイタダニの駆除は、春や夏にも行いますが、ミツバチが活動を停止した真冬にも行います。
真冬ヘギイタダニ対策は、ずっと行われてきた「基本の作業」ではなく、比較的新しい技術です。
昔の養蜂家は、真冬になると風雨で傷んでしまった巣箱の修理や、春以降に使用する巣素の制作を行うくらいなものでした。
しかし、ヘギイタダニの駆除方法にシュウ酸という有機化合物を使用する方法が考案されてから、真冬でもダニ対策が可能になりました。
その作業として、行うタイミングは1月中旬です。
頃顆粒状態のシュウ酸を用意します。そしてそのシュウ酸を蒸発させる器具に入れ加熱。そして加熱され気化したシュウ酸が煙となり巣箱内に充満し、ミツバチの体に付いたヘギイタダニを落とします。
いままでは、春の始めと夏の終わりくらいに市販されているダニ剤を巣箱内に入れることくらいしか対策方法がありませんでした。
このダニ剤が効き目はあるとはいえ、そのダニ剤に触れたミツバチが体についたヘギイタダニを落とすことができるものであるため、真冬でじっとして動いてくれない冬には効果はありませんでした。
しかし、シュウ酸を巣箱内に噴霧する方法が考案されてから、通年でダニ対策が可能となりました。
この効果はてきめんです。私が養蜂を行っている埼玉県内の知り合いの養蜂家界隈の感じではありますが、越冬できるコロニーの数は大幅に多くなってきていることを実感しています。
シュウ酸がおわったら砂糖水を給餌
ミツバチのコロニーに砂糖水を与えることは冬の必須の作業ではありません。むしろ、ミツバチは砂糖の成分であるショ糖を、ブドウ糖と果糖に分解してハチミツを生成しなくてはならず、寒さで活性が弱まっているミツバチたちには負担になってしまいます。
そんな理由もあり、すべての養蜂家が行っているわけでもありませんが、このシュウ酸によるダニ対策がおわったらミツバチたちの餌としての砂糖水を給餌する養蜂家もいます。
ちなみにその濃度は砂糖1㎏に対して水は1ℓ。
ではなぜ砂糖水をあたえるのか??
こうして餌を与える理由は、「餌が足りていないから与える」、という意味合いではありません。
その理由は早春に砂糖水を与えるとそれがなんらかの契機となり、女王は産卵を活発にしはじめることがあるからです。どうしてそうなるかは分かりません。
この時期に産卵が活発になってくれれば、春の始めにはコロニーのミツバチの数は増えており、桜のハチミツが採取できるようになります。
桜の蜜の味は非常に良く、尚且つ希少価値もあるので大変高価なもので大変人気もあります。
その蜜の香りは、面白いことに桜餅に巻いてある桜の葉の香りがします。
まとめ
光明が差してきた養蜂の持続可能性
養蜂業の持続可能性を奪うヘギイタダニ問題。現在は手探りながらも、メンソールや蟻酸、今回のようにシュウ酸を使用する方法など、さまざまな方法が試されています。
まだ「決定版」といえる方法はなかなか見つかっていないものの、養蜂の持続がより容易になってきている兆しがでつつあることは、喜ばしいかぎりです。
記事を書いた人
西山リョウ
埼玉県東松山市にて一雨養蜂園を経営
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