「幸せの国」が育む純粋なはちみつの魅力
GDPではなく「国民総幸福量(GNH)」を国の豊かさの指標とする独自の哲学で知られるブータン。この小さな仏教王国が、今、世界で最も純粋なはちみつの産地として注目を集めています。大気汚染や農薬の影響をほとんど受けない自然環境で育まれるブータン産はちみつは、その品質と持続可能な生産方法で、未来の食品モデルとなる可能性を秘めています。
東洋と西洋、二つの蜜蜂文化
ブータンの養蜂は1987年、スイスの援助団体「Helvetas」の協力で始まりました。Fritz Maurer氏が西洋ミツバチ(Apis mellifera)を導入したことがきっかけです。現在は約150人の養蜂家が「Beekeepers Cooperatives of Bhutan (BECOB)」として活動し、2018年にはISO認証も取得しています。
しかし、ブータン産はちみつの真の宝は「東洋ミツバチ(Apis cerana)」から採取される希少な蜜にあります。東洋ミツバチは在来種で、体が小さく敏捷ですが、西洋ミツバチと比べて収穫量が少ないのが特徴。その分、複雑で濃厚な熟成された風味を持ち、ブータン国内でも貴重とされています。
非加熱製法がもたらす生きた栄養素
ブータン産はちみつの最大の特徴は「非加熱処理」にあります。日本で流通するはちみつの99%が加熱処理されているのに対し、ブータンのはちみつは遠心分離器にかけた後、時間をかけて丁寧に濾過されます。この方法により、酵素や栄養素が破壊されることなく生きたまま保存されるのです。
非加熱のはちみつには大豆や味噌の30倍のグルコン酸が含まれているとされ、その健康価値は計り知れません。また、ブータン政府が2025年までに100%オーガニック農業の国を目指していることも、その純度と品質を高めている要因です。
OGOPプロジェクト:一県一品が世界をつなぐ
2015年、ブータン王室は「OGOP(One Gewog, One Product)」プロジェクトを立ち上げました。これは日本の大分県「一村一品運動」からインスピレーションを得たもので、一つの県に一つの名産品を育てる取り組みです。
2022年3月、国連機関の国際貿易センター(ITC)の支援により、南ブータン・チラン地域で採取された東洋ミツバチのはちみつが初めて日本市場に登場しました。王妃が中心となって推進するこのプロジェクトは、小規模生産者の収入源となりながら、地域経済の活性化と農村コミュニティの強化に貢献しています。
種類と特徴:花の違いが生み出す風味の多様性
ブータン産はちみつには主に2種類あります。7月に収穫される「ホワイトクローバーのはちみつ」は、ホワイトクローバーの花(80%)にブッシュベリー、マスタード、リンゴなどの花(20%)が混ざり、濃厚ながらも食べやすい味わいが特徴。
一方、9月収穫の「そばの花のはちみつ」は、ブータン特有のピンク色のそばの花から採取され、より濃厚で独特の香りを持ちます。どちらもブータンの自然環境を反映した、他では味わえない風味を持っています。
持続可能な未来へのモデルケース
ブータンの養蜂は単なる産業ではなく、持続可能な社会を実現するための象徴的な取り組みです。東洋ミツバチの保全は生物多様性維持に貢献し、地域に根差した小規模生産は地元コミュニティを活性化させます。
また、ブータンの「幸せの経済学」と自然との共生哲学は、今後の世界が目指すべき方向性を示しています。資源を大量消費する成長モデルではなく、自然と調和しながら質の高い生活を維持する「幸せの循環」—ブータン産はちみつはその甘く貴重な結晶なのかもしれません。
未来を見据えたはちみつの可能性
高品質のブータン産はちみつは、未来の健康食品市場で重要な位置を占める可能性があります。特に医療や予防医学の分野では、その純粋さと栄養価の高さから、様々な応用が期待できるでしょう。
また、養蜂を通じた国際協力は、技術移転や環境保全などの分野で新たなモデルケースを生み出しています。国連やEUなどの国際機関も注目するこの取り組みは、SDGsの実現にも大きく貢献しているのです。
幸せの国ブータンから届く一滴の純粋なはちみつ。それは単なる甘味料ではなく、持続可能な未来への希望の結晶なのかもしれません。
ブータン産はちみつの基本情報
- ブータン産はちみつの種類や特徴についての基本情報
- ブータンの養蜂の歴史や非加熱処理はちみつについての詳細情報
OGOP(One Gewog, One Product)プロジェクト
- OGOPプロジェクトと東洋ミツバチはちみつの商品化について
国連機関ITCの協力により ブータン産OGOP 東洋ミツバチのはちみつを発売
- 国連機関との協力による商品化についてのプレスリリース
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