
公園や庭、キャンプ場などで蜂を見かけたとき、「ミツバチなら大丈夫」「スズメバチでなければ危険ではない」と思っていませんか?
実は、ミツバチ・スズメバチ・アシナガバチでは、毒の成分や針の特徴に違いがあります。ただし、どの蜂でも強い腫れやアナフィラキシーを起こす可能性があるため、種類だけで安全性を判断することはできません。1, 4
今回は、身近な3種類の蜂毒の違いと、刺されたときに家庭で行う応急処置を分かりやすく解説します。
蜂の毒は、さまざまな成分が混ざった「カクテル」
蜂毒は一つの物質ではなく、ペプチド、酵素、アミン類などが混ざった複雑な液体です。これらが細胞膜や神経、血管などに作用し、刺された部分の痛み、赤み、腫れを引き起こします。毒の構成は蜂の種類によって異なります。1
ミツバチの毒
ミツバチ毒を特徴づける成分は、メリチンです。メリチンは細胞膜に作用するペプチドで、痛みや炎症に関係します。このほか、ホスホリパーゼA2、ヒアルロニダーゼ、アパミンなども含まれます。1
働き蜂の針には返しがあるため、人の皮膚を刺すと針と毒嚢が残ることがあります。残った毒嚢から毒が送り込まれるため、針を見つけたら早く除くことが大切です。2
スズメバチの毒
スズメバチ毒には、マストパランなどのペプチド、キニン類、ヒスタミンなどのアミン類、ホスホリパーゼやヒアルロニダーゼなどの酵素が含まれます。これらが組み合わさって、強い痛みや腫れを起こします。1, 3
スズメバチの針にはミツバチのような強い返しがなく、同じ個体が繰り返し刺すことができます。そのため、巣の近くで複数匹から攻撃された場合は、多量の毒が入る危険があります。3
アシナガバチの毒
アシナガバチはスズメバチと同じスズメバチ科に属し、毒にもマストパラン、キニン類、ホスホリパーゼ、ヒアルロニダーゼなど、共通する成分があります。1, 3
針に強い返しがなく、繰り返し刺せる点もスズメバチと共通しています。体が細く、比較的おとなしく見えるアシナガバチでも、巣を刺激すると刺されることがあるため注意が必要です。3
また、スズメバチとアシナガバチの毒には共通するアレルゲンがあるため、アレルギー検査などで交差反応がみられることがあります。ミツバチ毒とは特徴が異なりますが、「別の種類の蜂なら安全」とは考えないようにしましょう。3

「どの蜂が一番危険?」とは単純に決められません
蜂に刺された後の症状には、毒そのものによる反応と、蜂毒に対するアレルギー反応があります。刺された部分だけが痛む、赤くなる、腫れるといった症状は局所反応です。一方、全身のじんましん、呼吸困難、めまいなどが現れた場合は、アナフィラキシーの可能性があります。4
アナフィラキシーは、毒の量だけで決まるものではありません。1か所刺されただけでも起こることがあります。反対に、アレルギーがなくても多数の蜂に刺されれば、毒そのものの作用で重症化する可能性があります。したがって、蜂の名前を突き止めることより、刺された本数と症状を確認することが重要です。4, 5
蜂に刺されたときの応急処置
応急処置の基本は3種類ともほぼ同じです。違いは、主に「ミツバチでは針が残っていないか確認する」点にあります。
1.まず蜂から離れる
蜂を手で払ったり、その場で大声を出したりせず、姿勢を低くして静かに離れましょう。巣の近くでは仲間の蜂が加わる可能性があるため、処置より先に安全な場所へ移動します。5
2.ミツバチの針が残っていたら、すぐに取る
皮膚に針が残っていたら、カードの縁などで横に払うか、指やピンセットで取り除きます。「つまむと毒嚢を押してしまう」と心配されることもありますが、国際的なファーストエイド指針では、方法にこだわって時間をかけるより、できるだけ早く除去することが重視されています。2
スズメバチとアシナガバチの針には強い返しがなく、一般にミツバチのように針と毒嚢が皮膚に残ることはありません。針が見当たらなければ、無理に傷口を探らないでください。
3.流水で洗い、冷やす
傷口を流水でよく洗います。国内の行政資料には、洗いながら傷口の周囲を軽く圧迫し、毒液を出す方法も案内されています。ただし、強く揉んだり、処置に時間をかけたりせず、退避・針の除去・全身症状の確認を優先してください。5
その後、保冷剤や氷を布で包んで患部を冷やすと、痛みや腫れを和らげる助けになります。抗ヒスタミン成分やステロイド成分を含む塗り薬を使う場合は、薬剤師や医師に相談し、子どもには年齢に適した製品を使用してください。5
ポイズンリムーバーを案内する国内資料もありますが、アナフィラキシーを防ぐ器具ではありません。使用する場合も、ほかの応急処置や119番通報を遅らせないことが大切です。5
4.安静にして全身の変化を観察する
刺された後は一人にせず、少なくとも当面は、皮膚だけでなく呼吸、顔色、意識、吐き気などの変化にも注意してください。子どもは症状をうまく説明できないことがあるため、「急に元気がなくなった」「声がおかしい」「咳き込む」など、普段との違いも確認しましょう。

この症状があれば、すぐに119番
次のような症状が一つでもあれば、アナフィラキシーを疑って直ちに119番通報してください。4
• 息苦しい、ゼーゼーする、声がかすれる
• のどや舌が腫れる、飲み込みにくい
• 全身にじんましんが広がる
• 繰り返し吐く、強い腹痛がある
• 顔色が悪い、ぐったりする
• めまい、意識がもうろうとする
アドレナリン自己注射薬(エピペン®)を処方されている人は、医師から教わった方法で速やかに使用し、使用後も必ず救急車を呼びます。4
また、目を刺された、口の中やのどを刺された、多数刺された、頭・顔・首を刺された、以前の蜂刺されで全身症状が出た場合は、症状が軽く見えても早急に医療機関へ相談してください。5

やってはいけない対処法
傷口を口で吸う、刃物で切る、強く揉む、止血帯で縛るといった処置は避けましょう。口で吸うと、口内の傷から毒が入るおそれがあります。また、「蜂刺されにはアンモニア」という話もありますが、効果は期待できません。6, 5
蜂の種類によって毒の中身や針の特徴は異なりますが、刺されたときに最優先することは共通しています。安全な場所へ離れ、ミツバチの針があれば早く取り、流水で洗って冷やし、全身症状がないか確認することです。
いざというときに慌てないよう、家族でも応急処置と119番の目安を共有しておきましょう。
※本記事は一般的な情報を提供するもので、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状が強い場合や判断に迷う場合は、医療機関または救急相談窓口に相談してください。
参考資料
[1] Moreno M, Giralt E. Three Valuable Peptides from Bee and Wasp Venoms for Therapeutic and Biotechnological Use
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