日本で手に入るはちみつは何種類あるのか?

「はちみつは何種類ありますか?」という、意外に難しい質問

スーパーのはちみつ売り場を見ると、アカシア、れんげ、百花蜜、みかん、そばなど、いくつもの名前が並んでいます。

蜂蜜専門店やインターネット通販まで範囲を広げると、マヌカ、クローバー、ユーカリ、ラベンダー、栗、コーヒー、タイム、ローズマリーなど、見たことのないはちみつが次々と出てきます。

では、日本で手に入るはちみつは、全部で何種類あるのでしょうか。

50種類でしょうか。

100種類でしょうか。

それとも、500種類以上あるのでしょうか。

結論から言うと、はちみつの「種類」について、日本全体を対象にした公式な総数はありません。

なぜなら、はちみつには世界共通の「一種類をどう数えるか」というルールがないからです。

花の種類だけで分けるのか。
採れた地域まで分けるのか。
採蜜した季節や年まで区別するのか。
液状、巣蜜、クリーム状といった形態も種類に含めるのか。

数え方を変えれば、答えも大きく変わります。

そのため、「日本には○○種類のはちみつがあります」と一つの数字だけを示すと、かえって実態から離れてしまう可能性があります。

現時点で最も誠実に答えるなら、

日本で買えるはちみつは、蜜源となる花の名前で数えると少なくとも数十種類、産地や採蜜時期まで分けた商品として数えると100種類以上ある

という表現になります。

そもそも、はちみつの「種類」とは何を指すのか

はちみつの個性を大きく左右するのが、「蜜源」です。

蜜源とは、ミツバチが蜜を集める植物のことです。

例えば、ニセアカシアの花を主な蜜源とするものはアカシア蜂蜜、れんげの花なられんげ蜂蜜、みかんの花ならみかん蜂蜜と呼ばれます。

このように、特定の植物の特徴が強く表れたはちみつが「単花蜜」です。

一方、複数の花の蜜が混ざり合ったものは「百花蜜」または「多花蜜」と呼ばれます。

ここで、よくある誤解があります。

単花蜜は、「一種類の花の蜜だけが100%入っているはちみつ」という意味ではありません。

ミツバチに対して、「今日はアカシアの花だけに行ってください」と指示することはできないからです。

ミツバチは巣箱の周辺を飛び回り、その時期に蜜を多く出している花を訪れます。特定の花が広い範囲で一斉に咲くと、ミツバチは効率よく蜜を集められるため、その花に集中しやすくなります。

その時期に採れたはちみつのうち、特定の蜜源の特徴が優勢で、色、香り、味などにもその特徴が認められるものが、一般に単花蜜として流通しています。

日本養蜂協会も、単花蜜であっても他の花の蜜が混じることがあり、表示された花の蜜がベースになっていると考えるのがよいと説明しています。

つまり、単花蜜は「完全な純血」ではなく、その季節、その土地で主役になった花のはちみつなのです。

日本で見つけやすい国産蜂蜜

日本で生産される代表的な単花蜜には、次のようなものがあります。

日本養蜂協会は、国内で生産される主な単花蜜として、サクラ、ナタネ、レンゲ、ミカン、アカシア、クローバー、リンゴ、トチ、ソバなどを挙げています。

さらに、養蜂場の直売所や蜂蜜専門店、地域の道の駅、オンラインショップまで探すと、選択肢は一気に増えます。

菩提樹、きはだ、藤、柿、野ばら、ラベンダー、ひまわり、ヘアリーベッチ、びわ、各地の柑橘類など、一般的なスーパーではあまり見かけないはちみつも販売されています。

ただし、これらが毎年、同じ量だけ採れるとは限りません。

花が咲いても、雨が続けばミツバチは十分に飛べません。開花時期がずれたり、強風が吹いたり、気温が低かったりすると、花が蜜を出す量も変化します。

同じ地域、同じ花であっても、毎年同じはちみつが採れるわけではないのです。

農産物に「当たり年」があるように、はちみつにも年ごとの違いがあります。

ここが、工業製品とは違う面白さです。

「蜜源植物が数百種類ある」と「数百種類の蜂蜜がある」は違う

日本には、ミツバチが蜜や花粉を集める植物が数百種類あるとされています。

日本養蜂協会は、補助的な蜜源を含めると、日本だけでも400種類近い植物があると説明しています。

資料によっては、約500〜600種類の蜜源植物があるという数字が紹介されることもあります。

しかし、ここで注意しなければなりません。

蜜源植物が数百種類あることと、数百種類のはちみつが商品として流通していることは、同じではありません。

花が咲いてミツバチが蜜を集めていても、一つの商品として採蜜できるほどの量が集まるとは限らないからです。

単花蜜として採るためには、ある程度まとまった範囲に同じ植物が咲き、一定期間に十分な量の蜜が集まる必要があります。

住宅地の庭に咲く花や、山の中に点在する植物も、ミツバチにとっては重要な蜜源です。しかし、それだけを分離して瓶詰めできるほど大量に採れるとは限りません。

したがって、

「日本には500〜600種類のはちみつがある」

という表現は正確ではありません。

より適切なのは、

「日本には数百種類の蜜源植物があるとされるが、商品として安定的に流通するはちみつは、その一部である」

という説明です。

蜜源植物の数と、市場で買えるはちみつの数を混同しないことが大切です。

専門店では100種類以上に出会える

では、実際の市場にはどのくらいの種類があるのでしょうか。

京都の蜂蜜専門店ミールミィを運営する金市商店は、世界20か国以上、国内20都道府県以上から集めた100種類以上のはちみつを取り扱っています。

ここでいう100種類は、すべて蜜源植物が違うという意味ではありません。

同社が展開する「シングルオリジンハニー」では、

などを区別して、それぞれのはちみつの個性を示しています。

例えば、同じ「アカシア蜂蜜」でも、北海道で採れたものと長野県で採れたものでは、周辺に咲く植物、気候、土壌、開花時期などが違います。

さらに、同じ地域であっても、春の前半に採れたものと後半に採れたものでは、混ざり込む花の種類や割合が変わる可能性があります。

ワインがブドウの品種だけでなく、産地や収穫年によって区別されるのと似ています。

はちみつも、花の名前だけを見て終わる食品ではありません。

どの花から、どこで、いつ採れたのか。

この三つを見ることで、一瓶の背景が立体的に見えてきます。

輸入蜂蜜を含めると、選択肢はさらに広がる

日本は世界各地からはちみつを輸入しています。

そのため、日本国内では採れにくい蜜源のはちみつも購入できます。

代表的なものには、

などがあります。

米国のNational Honey Boardは、米国内だけでも異なる花に由来する300種類以上のはちみつが入手できると説明しています。

世界全体では、蜜源別のはちみつは3,000種類を超えるという目安も紹介されています。ただし、これは国際機関がすべてを数え上げた公式統計ではありません。

世界には統一された「はちみつ種類台帳」がなく、産地や採蜜時期をどこまで分けるかによって数字が変わるからです。

日本で買えるはちみつも、新たな輸入品や限定品が加わる一方、不作によって販売されなくなる商品もあります。

したがって、種類数は固定された数字ではなく、常に動いています。

国際規格では、大きく二つに分けられる

興味深いことに、国際食品規格であるCodex規格では、はちみつは原料の由来によって大きく二つに分けられます。

一つは、植物の花蜜に由来する「花蜜蜂蜜」です。

私たちが普段イメージするアカシア、れんげ、みかん、マヌカなどの多くは、こちらに含まれます。

もう一つが「甘露蜜」です。

甘露蜜は、花の蜜を主な原料とするのではなく、植物の生きた部分からの分泌物や、植物の汁を吸う昆虫の排出物などをミツバチが集めて作るはちみつです。

日本ではまだそれほど一般的ではありませんが、ヨーロッパではモミ、オーク、森林などに由来する甘露蜜が流通しています。

色が濃く、独特の香りやコクを持つものが多く、花蜜蜂蜜とは違った魅力があります。

売り場では数十種類、数百種類と細かく分かれる一方、原料由来という大きな視点では「花蜜蜂蜜」と「甘露蜜」に整理できるのです。

初めて食べ比べるなら、産地より先に「蜜源」を変える

はちみつの種類の多さを知ると、いきなり100種類を食べ比べたくなるかもしれません。

しかし、最初から産地や採蜜年の細かい違いを比較しても、個性をつかみにくいでしょう。

初心者は、まず蜜源の大きく異なる5種類程度を選ぶのがおすすめです。

例えば、

という組み合わせです。

これだけでも、「はちみつは全部同じ甘い食品」という印象は大きく変わるはずです。

次の段階では、同じ蜜源で産地の違うものを比べます。

北海道と長野県のアカシア蜂蜜、国産とハンガリー産のアカシア蜂蜜などを並べれば、同じ花の名前が付いていても味が完全には一致しないことが分かります。

さらに深く楽しむなら、採蜜年や採蜜時期の違いを比べます。

この順番で体験すると、はちみつの世界を無理なく理解できます。

はちみつは「数える食品」ではなく「出会う食品」

日本で手に入るはちみつは何種類あるのか。

答えを整理すると、次のようになります。

したがって、正解は一つの数字ではありません。

むしろ大切なのは、種類を多く覚えることよりも、一瓶のはちみつが「どの花から、どこで、いつ採れたのか」を見ることです。

はちみつは、工場で同じ味に整えて作られる甘味料ではありません。

その年に咲いた花、雨、気温、土地の植生、ミツバチの活動、養蜂家の判断が重なって生まれます。

同じ名前のはちみつでも、二度とまったく同じものには出会えないかもしれません。

そう考えると、はちみつは「全部で何種類あるかを数える食品」というより、土地と季節が瓶の中に残した風景に出会う食品なのです。

次に一本のはちみつを手に取ったら、ラベルに書かれた花の名前だけでなく、産地や採蜜時期にも目を向けてみてください。

その一瓶から、これまで見えていなかった、広大なはちみつの世界が始まります。

※はちみつは、乳児ボツリヌス症を防ぐため、満1歳未満の乳児には与えないでください。

主な参考資料

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