ミツバチの巣は宝物なり!
春にミツバチが動き出したとき、最初に養蜂家がしなければいけないことはミツバチたちに巣箱内の適切な場所に巣を作らせることです。
巣板という板を整然と巣箱内に並べると、ミツバチたちはそこに巣を盛り造営しはじめてくれます。
しかし春になるとミツバチたちの労働は凄まじく、並べた巣板以外にもどんどんと巣を造営し始めてしまいます。これは「無駄巣」と呼ばれるものですが、実は決して無駄ではなく、むしろ「宝物」とも言えます。
今回はそんなミツバチの巣の利用方法についてご案内いたします。
ミツバチの巣って、なにからできているの??
ミツバチの巣は、鳥の巣のように枝や葉など、外から持ってきたものを材料に構築されるものではありません。ミツバチは食べた花蜜と花粉を材料にし、腹部のロウ腺で生合成し、関節の隙間から蜜ロウを分泌し巣を造営します。
人間は摂取した糖質は脂肪にかわり体内の腹部などに備蓄されますが、ミツバチは食べた糖分(はちみつ)を腹部のロウ腺で合成し、関節から分泌します。
なぜそれが宝物といえるの??
こうしてつくられるミツバチの巣、いわゆるミツロウを生成するためにはそのミツロウの重さの10倍のはちみつが必要とされます。つまり、1gのミツロウができるには10g程度のはちみつが必要です。なぜなら、1gのミツロウを腹部のロウ腺から排出するためには、10gの蜂蜜をエネルギーとして食べる必要があるからです。
天然ハチミツの価格や、1匹のミツバチがその生涯で集められるはちみつの量はスプーン1杯程度の量であることを考えると、ミツバチの巣であるミツロウはなかなか貴重な代物です。
では、ミツロウって、なにに利用されてきたの??
そんな貴重なミツロウですが、私たちの日常でどのように利用されてきたのでしょうか。
ミツロウという名のとおり、ロウソクとして活用されてきたのは容易に想像がつきます。
実際日本でのロウソクそのものの始まりも、奈良時代の仏教伝来とともに中国から輸入された「ミツロウソク」が起源だそうです。
その後、遣唐使が廃止されたことにより輸入が途絶え、ロウソクの原料はミツロウから松ヤニに変わり、明治時代になりようやく日本国内でミツロウソクが量産されるようになったそうです。
今はなにに利用されているの??
このような歴史をもつミツロウ。その利用できる汎用性の広さが認められた今では、口紅、化粧品の乳化剤、軟こう、ガム、靴やカバンなどの皮製品に塗るクリーム、家具や床などの木工クリーム、クレヨン、絵の具、樹木の接ぎ木の乾燥防止剤などなど、様々な用途で利用されています。
子どもがうっかり口にしても安全なミツロウが原料のクレヨン。無垢の木材で製作されたテーブルや床などに、肌触りが良く自然のツヤを与えるミツロウの木工クリームなど。ミツロウは、他の材料では代用できない価値を私たちに提供してくれています。
ハンドメイドでなにかを作ることって、できるの??
このように、すくなからず価値を持つミツロウ。ハンドメイドでなにか作れるのでしょうか??おすすめは、やはりロウソク製作です。
ハンドクリームや化粧品などは薬事法の関係があることと、木工クリームなどは製作の技術的な問題と、制作後に活躍する機会がすくないという事情もあります。
そしてミツロウソクの製作は非常に簡単です。ハチミツの巣を溶かして好きな形に固める。
以上となります。
現在ではミツロウの元が固形で販売されているので、それを湯銭であたため液状化し、好きな型に流し込むか、粘度状の固さになった段階で手ごねで製作することもできます。
巣から製作したい場合は、近隣の養蜂家に問い合わせるのも手段かもしれません。
近年では趣味で養蜂を始められる方が急激に増えてきた印象を受けますので、安価で譲ってもらえるか相談してもいいかもしれません。
私の場合は、ミツロウ製品の製作まで手が回らないので、知人の木工作家や近所の興味ある方
などに差し上げてしまいます。
まとめ
食べた蜜を体内でロウに変えてしまうミツバチの不思議なメカニズムは、まだ解明されていません。そんな不思議を感じつつ、ロウソクをハンドメイドし、友人にプレゼントするなり自宅で楽しむのも、冬の楽しみの一つとしては良いかもしれません。
ロウソクから立ち上がる炎が、優しい印象の炎だと言われるミツロウソク。機会があれば、楽しんでみてみるのもオススメです。
養蜂家
西山 リョウ
埼玉県東松山市で「一雨養蜂園」を経営。